※今回は流産の描写が出てきます。苦手な方はお控えください。
先生
今日、しましょうね。
先生は深いため息をついて、取りつくろうように子宮がん検診をした。
エコー画面に映し出された胎嚢を見て、私も胸騒ぎがしていた。
なかったよね?
オカクミ
子宮がん検診が終わると、先生はエコーの写真をデスクの上にそっと置いた。
先生
おめでとうございます。エコーの写真です。
先生の顔に笑顔はなかった。
胎嚢の中身、ありませんよね?
オカクミ
先生
だけどオカさんの生理周期からいくとまだ5週ってことも考えられるから…。
ひとまず様子をみましょう。
次は2週間後に来てください。
11月の終わり。ほおに冷たさを感じながら帰路についた。
夜はエコー写真を見ながらネットで鬼のように検索。しかしどんなに知識を得ても、私にできるのは待つことだけだった。
モヤモヤする日々が1週間ほど続いたある夜、トイレにいくと心臓を突かれた。
出血してる!
あわてて産院に電話。血の色を確認されるも、鮮血ではないため翌日の受診になった。
翌日、写しだされたエコーを見ると胎嚢がまったく育っていない。素人目でみても明らかだ。
それでも、先生はもう少し様子を見るという。次の週にもう一度受診することになった。
受診日。
長男の妊娠中にもよく診てくれた女性の先生が担当だ。
先生
先生はエコーを見てあっさり言った。
先生
あさってなら予定が空いてるんですが、都合はいかがですか?
ふたつ返事で承諾した。先生があっさりしてるので、私もふん切りがつく。
手術前夜、なんだか怖くて不安に思っていた。遠方に住んでいる友人と「水曜日のダウンタウン」をLINEでやり取りしながら観て、なんとか気をまぎらわせていた。
翌朝、産院へ向かう20分前のことだ。
ズルッ…!!
なにかが出てくる感覚があった。
あわててトイレへ駆け込む。
半透明で球体のモノが、そこにはあった。
胎嚢だ!
胎嚢が出てきた!!
あらかじめナプキンをしていたため、産院に持っていくことにした。
産院のロビーで診察を待っていると、ミチルさんが駆け寄ってくる。
ミチル
今年中にまた会いたいなって思ってたら、こんな形で…。
今日わたしが担当します…。
ミチルさんは残念そうな顔をして、私の背中をさすってくれた。
だが結局、手術はせずに終わった。中身がきれいに出てきていたからだ。
ホッとした。手術というからには体への負担もまぬがれない。
周りの友人たちが流産するのをみて、生まれてくるのはキセキだと思っていた。しかし実際に自分が流産すると、なおさら実感した。
長男は生まれるべくして、生まれてきたんだ。
胎嚢だけだったあの子は教えてくれたんだと思う。
しかも自分から出てきてくれて、手術はナシ。
流産したのは悲しいし、残念だ。
でも、感謝しようと思った。
親孝行だったあの子。
来月でもいいよ!またおいでね。
ありがとう。
つづく。
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