ミチルさん
私はミチルさんと戸惑いながら握手した。
ミチルさんが寄り添ってくれることに嬉しく思う反面、ちょっと困惑していた。
今までの人生で、こんなに寄り添われたことがなかったからだ。
いつもならこんな場面で
世間
世間
世間
世の中もっと大変な人はいくらでもいる!
アンタの悩みは大したことない!!
…等々、受けたダメージを無視して無理やり前向きにさせられる声かけしかされなかったので、そちらに慣れていた。
変な話だが、ミチルさんの対応にむしろ違和感を感じていたのかもしれない。
オカクミ
などと思い、ミチルさんの優しさを素直に受け取れなかった。
産院を退院したのは土曜日。
だが長男は黄疸が出ていたため、翌日も治療しに戻らなければならなかった。
その上、週が開けると紹介状を持って大きな病院へ行かなければならない。
紹介された大きな病院で、ダウン症の確定検査(血液検査)が行われるのだ。
また、ダウン症の子は色んな合併症を持ち合わせていることが多いので身体中を検査しなければならなかった。
産後まもない体を引きずり、夫と一緒に待合室で
ずーーーーーーっと
座って待機しなければならなかったのは精神的にも肉体的にも辛かった。
だから長男が何をどう検査されていたのか、説明はされたが覚えていない。
オカクミ
と医師に聞くので精一杯だった。(もちろん否定された。)
しばらくは紹介された大病院と長男を産んだ産院を、訳もわからず行ったりきたりしていた。
産院ではいつもミチルさんが対応してくれ、たまに電話もかけてくれた。
私も少しずつミチルさんに心を開いていった。
ミチルさんは私に寄り添うのが仕事の一環だったとしても、その姿勢はすごく尊敬する。
私もミチルさんのような仕事人になりたい。
ミチルさんとは職種は違うけど、自分の仕事に真心をこめよう。
いつしかそう思うようになっていた。
長男の1か月検診が近づいてきたある日。
長男の1ヶ月検診後はミチルさんとはもう会えなくなるかもしれない。
この1か月間、ミチルさんには本当にお世話になったな…。
あの日の夜、寄りそってくれたことは一生忘れられないし、本当にありがたかった。
手紙で感謝の気持ちを伝え…
でも迷惑かな?どうしよう…?
オカクミ
迷った挙句、手紙を書くことにした。
桃川ミチル様
この1か月、いろいろ寄り添って頂いてありがとうございました。
……中略………
ミチルさんに長男を取り上げてもらえて良かったです。
本当にありがとうございました。
PS.いつか後田ユウコと3人で会えたら良いですね!
オカ クミ
1か月検診当日。
長男のお世話グッズと一緒に手紙も忘れずリュックに。
産院に着くといつものようにミチルさんが来て、医師の診察も付き添ってくれた。
医師は長男の母子手帳に書いてある、大きな病院での検査結果をながめていた。
長男が血液検査の結果「ダウン症」と確定されたのを見て、
医師
………。
…特に、ありません。
オカクミ
本当は聞きたかった。
妊婦検診のエコーで、
ダウン症と分からなかったんですか?と。
でも、聞けなかった。
分かっていたところでどうしようもないし、
これ以上突き詰めて考えると、長男の存在を否定することになってしまう。
存在だけは否定したくない。
モヤモヤしながら1か月検診は終わった。
ミチルさんはそんな気持ちを知ってか知らずか、
会計するまでの間の待合室で、ずっと隣でおしゃべりをしてくれた。
ミチル
オカクミ
ミチル
この前たまたまメール見たら、ユウちゃんから連絡が来てたことに気付いて!(笑)
オカさんのことが書いてありました^^
落ち着いたら食事行きましょう!
私はとてもうれしかった。
そういえば手紙、渡さなきゃ!
今日、ミチルさんに手紙書いてきたんです…!
オカクミ
私はリュックから手紙を取り出し、ドキドキしながら渡した。
受けとったミチルさんはー
つづく。
⬇︎「見たよ!」という意味で押してくれるとうれしいです^^