陣痛がくるのを待つ夜ー
不安をかき消したくて「池上彰のお金の学校」を読んでいた。(他にも金利の本や、たぱぞうの米国株投資の本を読み散らかしていた。)
2~3時間おきに様子を見にくる夜勤の助産師さんたちが、そんな私をみては驚いていた。
しかし助産師さんの1人、Nさんも株式投資をしていることを話してくれた。
助産師Nさん
ぜ〜ったい買いどき!!
いつそこまで下がるのか気になって眠れないんですよね〜!
(※この日はコロナショックで急に円高が進んだ日でした。)
オカクミ
助産師Nさん
助産師Nさん
絶対寝てくださいよ!(笑)
助産師Nさんは笑って部屋から出ていった。
はだ寒さが残る3月の早朝。結局陣痛はこないままだった。
助産師Nさんが笑顔で私を起こしに来る。
助産師Nさん
これから陣痛室で朝ごはんを食べてもらって、7時30分から陣痛促進剤を注入していきますね!
私が朝ごはんを食べているあいだ、助産師Nさんはプライベートのことを話してくれた。
昔付き合っていた人がFXで1億以上稼いでいたことや、兄弟が骨肉腫を患ったことがあること(幸いにも完治しているようだ)等々…。
株の話をきっかけに、なんだかすっかり仲良くなっていた。
8時を過ぎたころ陣痛室に夫が合流し、日本株の話でさらに盛り上がった。
オカクミ
買いかなぁ?!
夫
助産師Nさん
それ絶対買いですね!買おうかな?!
夢中になって株の話をしていると、ミチルさんが陣痛室に入ってきた。ミチルさんは株の話で盛り上がる私たちを、1人ポカーンと見ていた。
Nさんの帰る時間まで、株の話は続く。
助産師Nさん
これからト◯タとAN◯の株、買いますねっ!
出産頑張ってくださ〜い♡
あはは〜!!と笑いながらみんなで見送った。
3人となり、一瞬の沈黙が流れる。
ミチルさんは部屋の入り口へ向かい、ドアの前で立ち止まった。
そのまま私たち夫婦の方にスッと向きなおり、言った。
ミチル
今日担当させていただきます、助産師の桃川です。
よろしくお願いします!
深々とお辞儀をし、部屋から出ていった。
オカ家
ミチルさんの決意のようなものを見た気がして、心を打たれた。
私が陣痛で苦しんでいる間、ミチルさんは友だち口調でずっと励ましてくれていた。
2時間半におよぶ戦いの後、お腹から追い出されるように次男が生まれた。
私のとなりに連れてこられる。
オカクミ
声をかけ、次男の顔を指でなでようとした。
すると次男は私の顔をみて、指をパッ!とつかんだ。
オカクミ
心から安堵した。長男は私たちの指をにぎることができなかったからだ。妊娠して以来ずっと感じていた、底知れない不安から解き放たれた瞬間だった。
ミチル
オカクミ
ミチル
そういって2人で笑いあった。
分娩台で休ませてもらったあと、私は車椅子で部屋に戻ることになった。
オカクミ
ミチル
ミチルさんに車椅子を押してもらいながら、他愛のないおしゃべり。なんだか、友だちと自転車で下校していた高校時代のようだった。
次男とは、生まれたその日からおなじベッドで寝ることができた。前回の出産時、長男は保育器の中だったので、喜びしかなかった。
充足感に包まれて、夫が長男をつれてくるのを待つ。
オカクミ
つづく。
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